乳房再建の方法
女性にとって身体的な特徴のひとつである乳房を失うことは精神的な負担だけではなく生活面においても不便さを感じることがあるはずです。
例えば、「パットを使用するのが煩わしい」、「胸の開いた服が着られない」、「水着を着られない」、「温泉に行く気になれない」、「家族やお孫さんとお風呂に入れない」などです。
もしも貴女が不運にも乳癌の治療を受けて乳房を失ってしまった場合、乳房を再建するという方法を選択することができます。
貴女が精神的にも生活面でも乳房を取り戻したいと思ったならば、あるいはどうしようと悩まれている方は是非一度専門医に相談してみて下さい。
どのような方法があり、いずれの方法が貴女に適しているか、専門医が丁寧にご説明させていただきます。
もちろん豊富な症例写真もご覧いただけます。
CONSULTATION 手術の方法
手術方法(どれだけ組織が残っているか)や放射線治療を受けたかどうか、反対側の乳房の形、生活習慣(趣味、職業など)などによって適切な再建方法は異なります。
再建方法としては人工乳腺を用いる方法と自家組織を用いる方法に大別されます。
多くの場合、まずは乳房の高まりを再建します。その後に数ヶ月経過して形が落ち着いた段階で乳輪・乳首を再建します。
次にそれぞれの再建法の特徴について簡単にご説明します。
人工乳腺(ソフトコヒーシブシリコン)を用いた方法
ゼリー状のシリコンの入ったシリコンバッグを用いて乳房の高まりを再建します。
新たな傷をつけることなく乳房を再建できます。
貴女の胸の皮膚にゆとりのある場合は最初から人工乳腺を移植することができます。
もしも皮膚にゆとりが少ない場合は、まずは人工乳腺を移植するためのスペース作りから始めます。
初回手術でティッシュエキスパンダー(組織拡張器)を胸の筋肉の下に挿入します。
これは風船のようなもので、通院で生理食塩水を注入しながら少しずつ組織を伸ばしていきます。
そして数ヶ月後に反対側の乳房に合わせた大きさと形の人工乳腺に入れ替えます。
また、「せっかく再建するのだから反対側の乳房も大きくしたい」、「反対側の乳房が垂れ下がっているのでそれも治したい」などのご要望をかなえることもできます。
ただし、垂れ下がった乳房は人工乳腺では再建はできません。
人工乳腺を覆うだけの十分な皮膚がない場合(左上)、大胸筋下にエキスパンダーを挿入し(右上)、エキスパンダーに生理食塩 水を加え、徐々に皮膚を伸ばします(左下)。その後、エキスパンダーに代わって人工乳腺を挿入します(右下)。
広背筋皮弁を使用した方法
背中の筋肉を利用する方法。小~中程度の乳房の再建が可能です。
特に腋の下から胸にかけての凹みが目立つ方には有効です。
ただし背中に新たな傷跡ができてしまいます。
また、背中の皮膚が胸に移動するので丸い傷跡が再建乳房に残ります。
腹直筋皮弁を用いた方法
お腹の筋肉を利用する方法。中~大程度の乳房の再建が可能です。
大胸筋の切除を受けた方には特に適しています。また、お腹まわりがスリムになるのもメリットといえます。
ただし、お腹に新たな傷跡ができます。また、お腹の皮膚が胸に移動するので丸い傷跡が再建乳房に残ります。
お腹の手術を受けたことがあって傷がある場合には適しません。
時には、お腹の筋肉がなくなることで運動時や長時間歩行時などにお腹の張りを感じることがあります。将来出産の予定がある方にもおすすめしていません。
CONSULTATION 乳輪・乳首の再建
乳輪・乳首は乳房の膨らみを再建してから6ヶ月~1年後くらい経過して形が落ち着いてから慎重に位置を決めて再建します。
乳首は反対側から半分を移植するか、適切な場所に皮膚を盛り上げて(これを皮弁といいます)作成します。
濃い色は足の付け根の部分の皮膚移植をするか、入墨によって濃い色を付けます。
ご自身の乳首が残っていた場合はその乳首を移動させることも可能です。
また、ご自身の反対側の乳首にそっくりのシリコン製人工乳首を作ることもできます。
この人工乳首は肌に優しい専用の糊を使って、ご自身で取り付け・取り外しが可能です。
SIDE EFFECT 主なリスク、副作用など
手術をすることで腫れが発生します。
内出血となるケースがありますが、時間の経過とともに治ることがほとんどです。
手術直後は切開部分の赤みができ、目立たなくなるまでに時間がかかることもあります。